Edward Bagdasarian
Armenia
(1922 - 1987)


日本語表記 エドワード・イヴァナヴィチ(ホヴァネシ)・バグダサリアン
英語表記 Edward Ivanovich/Oganesovich Bagdasarian
原語表記 Էդուարդ Հովհաննեսի Բաղդասարյան (Armenian)
露語表記 Багдасарян, Эдуард Иванович/Оганесович

英語別表記  (名) Eduard, Edvard, Edouard, Etvart (姓) Bagdasaryan, Bagdassaryan, Baghdasaryan, Baghdasarian, Bacgdasarian, Bagdassarian (*1)
日本語別表記 エドゥアルド・バグダサリャン
生没年月日 1922年11月14日 ~ 1987年11月5日 (64歳)



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◆ 略 歴

1922 11月14日, 現・アルメニア共和国のエレバン(Yerevan)に生まれる.
1940 現・ジョージア国(グルジア)のトビリシ(Tbilisi)にある中等教育学校を卒業.
1941 トビリシの10年制音楽学校(※0)を卒業. トビリシ国立音楽院(※1)へ入学.
1946 エレバンに転居, エレバン音楽院(※2)に転入.
1947 エレバン音楽院 ピアノ科を修了. ゲオルギー・サラジェフ(G.Sarajev)に師事.
1950 エレバン音楽院 作曲科を卒業.グレゴリー・エギアザリアン(G.Eghiazaryan)に師事
1951 アルメニア文化施設(モスクワ市)(※3)にて作曲の研鑽. ゲンリフ・リチンスキー(G.Litinsky)やニコライ・ペイコ(N.Pejko)に師事.
1953 アルメニア文化施設での研修を修了. アルメニア民謡の採集・調査のためにシシアン(※4)へ滞在.
1954 エレバンに戻り, 舞台音楽やテレビ放送の音楽を担当する傍ら, 自作のクラシック作品を演奏するピアニスト, 五重奏団などで活躍.
    ロマノス・メリキャン音楽大学(※5)で講師を務める.(専門: 作曲科)
1956 アルメニアSSR放送 ラジオ・テレビ放送部門器楽五重奏団のリーダー(音楽監督)として活躍. (~1966)
1961 エレバン音楽院で講師を務める (専門: 音楽理論・作曲科) (~1987)
1963 アルメニアSSRより芸術功労者(名誉芸術家)の認定.
1973 ロマノス・メリキャン音楽大学で作曲科准教授に就任.
1982 エレバン音楽院で作曲家教授に就任.
1987 11月5日, エレバンにて死去.



◆ 周 辺 知 識 (アルメニア人について) 
※あまり音楽とは関係ない余談です. 興味があればを押してみてください.


[ ナヒチェヴァンの歴史とハチャトゥリアン家の出自 ]
   戦前に生まれているアルメニア人の出生(出身地)と少年期の情勢を掘り下げようとすると, なかなかに複雑なことが少なくない.
  それはアルメニアという国が歩んできたそれまでの歴史と地政学, ロシアを巡る情勢と第一次世界大戦,
  …といったように様々な要因が重なってそうせざるを得なかった人々の営みの結果であるとも言える.

  ここでは, バグダサリアンと直接的な関係はないものの, 当時のアルメニア人の出身地事情を探るため作曲家 ハチャトゥリアンを例に説明を試みる.   
   


[ 離散したアルメニア人(ディアスポラ) ]   
   +(未)


[ ジョージアのアルメニア人 ]   
   +(未)


[ アルメニア放送音楽部門 ]   
   +(未)



◆ 名 前 
※あまり音楽とは関係ない余談です. 興味があればを押してみてください.


[ アルメニア人の名字について ]
  ハチャトゥリアン, ババジャニアン, アルチュニアン, ミルゾヤン, スペンディアリャン, チェクナヴォリヤン, …
  思いつくアルメニア人の名前を挙げると, とりあえず語尾に共通点があるらしいことがすぐにわかる.

  アルメニア人の名前を見分ける点でこれは実際正しい指摘であり, 以下のようなルールがある.   
   


[ アルメニア人の名前(ファーストネーム) ]   
   +(未)


[ Bagdasarianという姓について ]
  


[ 作曲家 Bagdasarianの名前について ]
  




◆ 交 友 

* 師 *
・[p] ゲオルギー・ヴァルドヴィチ・サラジェフ (Georgy Vardovich Saradjev, 1919-1986):
  ピアニスト. 教育者. モスクワ生まれ. 1944年よりエレバン音楽院ピアノ科講師.

・[p] ニコライ・イヴァナヴィチ・ペイコ (Nikolay Ivanovich Peiko, 1916-1995):
   作曲家. 教授. モスクワ生まれ. ミャスコフスキーの門弟. エレバン音楽院では1942-49年の間, 作曲科を指導した. 10の交響曲が代表作.

・[p] グリゴリー・エギアザロヴィチ・エギアザリアン (Grigoriy Egiazarovich (Y)Egiazaryan, 1908-1988):
   作曲家. ミャスコフスキーの門弟. 1938年からエレバン音楽院作曲科講師, 59年より同教授, 54-60年は同音楽院学長. 代表作は交響詩『アルメニア』.

・[p] ゲンリフ・ハインリヒ・リチンスキー (Genrikh Heinrich Litinsky, 1901-1985):
   作曲家. アルメニア文化施設での師.



* 共作 *
・[p] ガザロス(ラーザリ)・サリアン (Ghazaros Saryan, 1920-1998):
   作曲家. ロストフ・ナ・ドヌ生まれ(ロシア). バグダサリアンの一部楽曲を作詞.

・[p] ステファン・リスタファローヴィチ・ジェルバーシャン (Stephan Xristoforovich (D)Jerbashyan, 1917-1973):
   作曲家. バクー生まれ(アゼルバイジャン). 交響詩『1905年』を共作.



* 弟子 *
・[p] ティグラン・マンスリアン (Tigran Mansurian, 1939- ):
   作曲家. 教育者. ベイルート生まれ(レバノン共和国). ロマノス・メリキアン音楽大学作曲科時代の門下生. 1960年 卒業(1956-1960). その後, サリアンに師事.

・[p] コンスタンティン・ペトロシアン (Konstantin Petrossian, 1946- ): 作曲家. エレバン生まれ. エレバン音楽学校時代の門下生. 1965年 卒業.

・[p] アラム・サティアン (Aram Satian, 1947- ): 作曲家. ポピュラー音楽家. エレバン生まれ. ロマノス・メリキアン音楽大学時代の門下生.

・[p] セトラク・セトラキアン (Setrak Setrakian, 1938- ): 作曲家. ピアニスト. エレバン音楽院和声科時代の門下生. 1971-72年.



◆ 作 風 

・同時代を生きた アルノ・ババジャニアン(1921-1983)やアレクサンドル・アルチュニアン(1920-2012)ら同様,
 アルメニア音楽の持つ匂い立つような音階 [*3], 伝統舞踊のリズムを生かした小品が多い.

・基本的に 調性音楽の枠を超えた音遣いはしないものの, 不協和な和音を好んで使う点が認められる.
 具体的に言うなら, 4度堆積和音を頻出[*4]させたり, 左手と右手で異なる調で使われる和音を叩きつける[*5]などインパクトある使い方をする.

・自身がピアニストだったこともあり, 作品の多くはピアノに関わるものが多いが, 最も有名な作品はヴァイオリンとオーケストラのための『狂詩曲』である.
 ただし, 現在ではほとんどの場合においてこの作品はヴァイオリンとピアノの形(すなわちリダクション)で演奏されることが常である.

・大作『24の前奏曲』は1948年頃から書かれ, モスクワのアルメニア文化施設での研鑽, 民謡採集などの期間を挟み完成されている.
 特に, 短めの小品は民謡らしさが強い反面 民族的な響きが薄いが, 規模の大きな小品は構成が練られ, 進行が凝っていて完成度が高い.

・72年作曲の3つの歌では、1953年に行ったアルメニア民謡の採集が生かされている.
 この曲は後に2度ほど編成を変えた作編曲が行われており, (資料に乏しいものの)重要な作品のひとつであると考えられる.

・管弦楽の扱い方は師 エギアザリアンの影響が強い. 両者ともに音源に乏しいため, 傾向を分析するほどの判断材料は少ないが,
 エギアザリアンの楽曲『交響詩 "アルメニア"』(近日音源用意予定)とバグダサリアンの映画音楽(作品欄参照)は音の選び方が似ている. ・・・と思われる.

    



◆ 作 品 
太字は楽譜・音源が(一部または全部)手元にあるものです. (#: 楽譜のみ *: 音源のみ #*:楽譜・音源)
[ 日本語 表記 ]


For Symphonic Orchestra
For Soloist and Orchestra

For Chamber Instruments

For Piano

For Choir with accompaniment


Pop Music

Cinema Music




◆ 録 音 ・ 出 版 

C D

BAGDASARIAN - Piano and Violin Music


Mikael Ayrapetyan (pf) [TR.01-26], Vladimir Sergeev (vn) [TR.25,26]
2014/08/26
★★★☆☆☆


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hmv
01. 24 Preludes No. 1 in C major
02. 24 Preludes No. 2 in A minor
03. 24 Preludes No. 3 in G major
04. 24 Preludes No. 4 in E minor
05. 24 Preludes No. 5 in D major
06. 24 Preludes No. 6 in B minor
07. 24 Preludes No. 7 in A major
08. 24 Preludes No. 8 in F sharp minor
09. 24 Preludes No. 9 in E major
10. 24 Preludes No. 10 in C sharp minor
11. 24 Preludes No. 11 in B major
12. 24 Preludes No. 12 in G sharp minor
13. 24 Preludes No. 13 in F sharp major
14. 24 Preludes No. 14 in E flat minor
15. 24 Preludes No. 15 in D flat major
16. 24 Preludes No. 16 in B flat minor
17. 24 Preludes No. 17 in A flat major
18. 24 Preludes No. 18 in F minor
19. 24 Preludes No. 19 in E flat major
20. 24 Preludes No. 20 in C minor
21. 24 Preludes No. 21 in B flat major
22. 24 Preludes No. 22 in G minor
23. 24 Preludes No. 23 in F major
24. 24 Preludes No. 24 in D minor
25. Rhapsody for violin and piano
26. Nocturne for violin and piano
All composed by Bagdasarian
Dance, Drama, Decadance


Raffi Besalyan (pf) [TR.01-10]
2012/06/28
★★★★☆☆

Official Site
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hmv
01. Piano Sonata No. 2 in B flat minor, Op. 36 -1st mvt. Allegro agitato (Rachmaninov)
02. Piano Sonata No. 2 in B flat minor, Op. 36 -2nd mvt. Non Allegro. Lento (Rachmaninov)
03. Piano Sonata No. 2 in B flat minor, Op. 36 -3rd mvt. L'istesso tempo. Allegro molto (Rachmaninov)
04. Polka de V.R. (Rachmaninov)
05. Prelude in B minor (from 24 Preludes) (Bagdasarian)
06. Prelude in E major (from 24 Preludes) (Bagdasarian)
07. Prelude in D minor (from 24 Preludes) (Bagdasarian)
08. Mephisto Waltz No. 1 Der Tanz in Der Dorfschenke S. 514 (Liszt)
09. Garun a (Spring) (Komitas)
10. La Valse (Ravel)
KOMITAS - Armenian Music for Piano


Zemphira Barseghian (pf) [TR.01-06]
1995/11/07
★★★★☆☆


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01. 6 Dances for piano (Komitas)
02. Works: Shoger Djan - Yerkingn Eh - Habrban (Komitas)
03. 12 Children's Pieces for piano (Komitas)
04. Works: Garoun A - Gakavik - Dzirani Dzar (Komitas)
05. Works: Folk Style - Poema (Komitas)
06. Humoresque for piano (Baghdasarian)
In memory of Susanna Vanezijan


Susanna Gregorian (vn) [TR.01-09], Shushan Kocharian (pf) [TR.01, 02-09]
2004
★★★★☆☆


Official Site
01. Song-Poem "In Honor of the Ashugs" for violin and piano (Khachaturian)
02. Sonata-Monologue for violin solo (Khachaturian)
03. Rhapsody (Bagdasarian)
04. Perpetuum Mobile (Mirzoian)
05. Nocturne for violin and piano (Khachaturian)
06. Dance No. 1 in B flat major for violin and piano (Khachaturian)
07. Lullaby for violin and piano (Khachaturian)
08. Sabre Dance from the ballet "Gayaneh" (Khachaturian)
09. Krounk (Crane) (Komitas)
Catherine Manoukian - Elegies & Rhapsodies


Catherine Manoukian (vn) [TR.01-12] Akira Eguchi (pf) [TR.01-12]
1998/04/17
★★★★☆☆

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hmv
01. Poeme elegiaque, Op. 12 (Ysaye)
02. Slavonic Dances, Series 1, Op. 46, B. 83 (Dvorak=Kreisler)
03. Slavonic Dances, Op. 72 (Dvorak=Kreisler)
04. Serenade melancolique, Op. 26 (Tchaikovsky)
05. 21 Hungarian Dances, WoO 1: No. 2 in D Minor (Brahms=Joachim)
06. Nocturne No. 20 in C sharp minor, Op. posth. (Chopin=Milstein)
07. Polonaise No.1 in D major, Op. 4 (H.Wieniawski)
08. 12 Danzas espanolas, Op. 37: No. 5. Andaluza (Granados=Kreisler)
09. Hitlahavuth (Dance of the Masada) (Weinzweig)
10. Krunk (The Crane) (Komitas)
11. Elegy (Babadjanian)
12. Rhapsody (Bagdasarian)



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◆ 注 釈 ・ 備 考 

(*1)  アルメニア語圏においてバグダサリアン姓はそこまで珍しいものではないのだが, アルメニア語やロシア語の表記を英語に直した場合, 表記ゆれが激しいことに注意されたい.

(*2)  エレバン音楽院はアルメニアにおける音楽学校の中で歴史が古く, もっとも権威がある.
   現在の名称はアルメニア音楽の立役者の名前を冠した「エレバン=コミタス国立音楽院」である.

[*3]  アルメニアの民族音楽に頻出する音階(のひとつ)は, 西洋音楽における長音階と和声的短音階の中間のような音階である.
   たとえば Cを主音としたとき, C・D・E・F・G・Ab・Hというように第6音をフラットする.

[*4]  #4
 

[*5]  #5
 

[*5]  『金の子牛』はコメディ映画であるが, もともと金の子牛とは旧約聖書にその出自がある.

 

(*7)  この作品は4つのショート・ストーリーのオムニバス作品となっている.
   各タイトルは「愛のくだり」「母のヤギ」「裏切られた信頼」「シミ」とある. ・・・なんだかすごく気になりますね.

(*8)  #8
 

(*9)  13歳の少年と彼の友人をとりまくレニナカンの5人の鍛冶職人を舞台にした長編映画.
   レニナカンとはトルコ国境付近のアルメニアの都市で現在はギュムリという名前に改められている.
   この作品は1964年にリニューアルされ隔年開催されるようになったソビエト映画祭の第3回レニングラード会場において優秀賞(第2位)を受賞した.
   ロシア語のウィキペディアにも個別のページが作られている.
   参考: 「三角の家」

(*10)  第一次世界大戦を題材としたドキュメンタリー映画. TV放映された.

(*11)  1915年, オスマン帝国によるアルメニア人虐殺により家族を失った主人公 ドゾリ・ミロ.
   命からがらトルコ民兵と共に故郷を脱した彼は東アルメニアに疎開し, その地で戦争難民として生活をはじめる.
   作曲家バグダサリアンの生涯最後にして最大規模の劇伴音楽となっている.


 





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Composer Edward Bagdasarian
playing his own music in Omsk (1978)




Edward Bagdasarian (young)



            Edward Bagdasarian



his teacher_Georgy Saradjev 
(1919-1986)

 his teacher_Georgy Saradjev 
(1919-1986)

his teacher_Nikolai Peiko 
(1916-1995)

 his teacher_Nikolai Peiko 
(1916-1995)

his teacher_Grigoriy Egiazaryan 
(1908-1988)

 his teacher_Genrikh Litinsky 
(1901-1985)

Composer_Ghazaros Saryan 
(1920-1998)

 Composer_Stephan Jerbashyan 
(1917-1973)

Composer_Tigran Mansurian 
(1939- )

 Composer_Konstantin Petrossian 
(1946- )

Composer_Aram Satian 
(1947- )

 Composer_Setrak Setrakian 
(1938- )


◆最終更新日: 2020/07/27